紹介
全ては葡萄の収穫から始まります。ここから蒸留、オー・ド・ヴィーの選別、そして熟成へと進み、その歳月は数十年になることもあります。メゾン・レミーマルタンのクラフツマンシップが織りなす工程と、セラーマスターの担う任務をご覧ください。
香り高きオー・ド・ヴィーの秘密は、葡萄の木が育つ石灰質の土壌にあります。
1724年に創業し、誇り高き葡萄栽培の伝統を継承してきたメゾン・レミーマルタンは、コニャック地方の中心部に根を下ろしました。コニャック・フィーヌ・シャンパーニュを専門とする唯一の大手コニャックメゾンです。
アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ(AOC、原産地統制名称)の認証を受けて「コニャック・フィーヌ・シャンパーニュ」を名乗るブレンドは、コニャック地方の2大クリュであるグランド・シャンパーニュとプティット・シャンパーニュで生産されるオー・ド・ヴィー(前者が50%以上)を使用しています。
特有の石灰質の土壌が乾燥した気候でも水分を蓄えるため、葡萄とワインは安定して素晴らしい品質になります。続いてレミーマルタン独自の製法である「おり(残留酵母)」を残したままの蒸留が葡萄本来の香りを凝縮します。そして熟成によってオー・ド・ヴィーの秘めたる潜在性を余すことなく解放するのです。こうしてレミーマルタンのエレガントかつ芳醇な香りが生まれるのです。
原産地統制名称
コニャック・フィーヌ・シャンパーニュ
2大テロワールの融合
葡萄の収穫
長い夏が過ぎ、暑さにも陰りが見えたとき、収穫の季節は始まります。
葡萄から果汁をやさしく絞り出し、5~7日間発酵させます。
その結果、糖分を添加せずにアルコール度数が7~9%ほどに達した、ドライで酸味に富む蒸留に最適な白ワインが出来上がります。
メゾン・レミーマルタンは、品質に妥協しません。最高品質の葡萄を毎年十分に確保するため、アライアンス・フィーヌ・シャンパーニュという同盟を設立しています。
1966年より続く他に類を見ない同盟で、フィーヌ・シャンパーニュのワイン農家と蒸留業者が対等なパートナーシップを基盤とした強固かつ長期的な関係を結んでいます。レミーマルタンは、この中で約1000軒のワイン農家と緊密に連携し、メゾンの基準を満たすための助言を提供し、3世紀にもわたって磨かれてきた知識とクラフツマンシップを伝えています。
蒸留の工程
収穫が終わると、蒸留の工程が10月から3月まで続きます。
「レミーマルタンの蒸留方法は、今日まで伝統を守り続けています」
レミーマルタンは、おり(残留酵母)を残したままワインを蒸留します。小型の銅製スチルを使い、近代的な大量生産方式では真似できない深みと香りのある原酒を生み出します。この方法では、安定したフレーバーを作ることも可能になります。バッチごとに、約24時間かけて2回蒸留します。時間はかかっても、葡萄の香りを閉じ込めた最高純度のエッセンスを抽出するため、1724年の創業以来、変わらず2回蒸留を続けています。蒸留では、最もクリアで香り高く、バランスの取れたハート(蒸留の中心となる部分)を得るために、最初と最後の抽出分は破棄します。
こうして生まれるのがオー・ド・ヴィー(「命の水」)というアルコール分約70%の透明な液体です。1リットルのオー・ド・ヴィーを生産するためには、12キロもの葡萄が必要です。
レミーマルタンが長い時間と手間暇のかかる蒸留方法にこだわっているのは、これがレミーマルタンのスタイルを体現し、セラーで数年、数十年と熟成できるエレガントなオー・ド・ヴィーを生産できる唯一の方法だからなのです。
オー・ド・ヴィーの選別
蒸留の次は、セラーで熟成させるオー・ド・ヴィーの選別です。
「農家には、フルーティ、芳醇、エレガントで繊細なオー・ド・ヴィーを求めています」
毎年、1000軒以上のワイングローワーがオー・ド・ヴィーを持ち込み、選別を受けます。レミーマルタンのセラーマスターにとって、全てのオー・ド・ヴィーにはそれぞれの個性があり、風味と香りが微妙に異なっています。厳選するポイントは、コニャック・フィーヌ・シャンパーニュの真髄を維持することと、レミーマルタンのスタイルを継承できることです。
冬、週に数回のテイスティング委員会を開き、1度に20~30種類のオー・ド・ヴィーを審査します。シーズン中、テイスティングするサンプルは2000種類以上にも及びます。
サンプルはブラインドテイスティングで、詳しく知るを隠して審査します。求めるのは、フルーティかつ芳醇で、それでいて重すぎないオー・ド・ヴィー。言い換えるなら、エレガンスとハーモニー。
これらの性質を持たないオー・ド・ヴィーはすぐに却下し、レミーマルタンのスタイルを託すに相応しいものだけを選び出します。厳密な選別の後、オー・ド・ヴィーはセラーで熟成の時を過ごし、未来のコニャックとなっていくのです。
コニャックの熟成
グランド・シャンパーニュとプティット・シャンパーニュのオー・ド・ヴィーは熟成のポテンシャルが高いため、コニャックの規格で必要とされる最低期間(2年)よりもはるかに長く熟成させることにしています。
「レミーマルタンのコニャックをブレンドするために使用するオー・ド・ヴィーは、何年も熟成させています」
レミーマルタンでは、高品質な木材で知られるリムーザンの森で採れるオーク製の樽を使用しています。リムーザンのオークは、オー・ド・ヴィーとセラー内の空気をじっくり、しっかりと交わらせることができます。これにより、オー・ド・ヴィーの香りが年月を経て発展していきます。リムーザンオークは木目が密でありながら細かく孔が開いていることで、オー・ド・ヴィーに樽の香りをゆっくりと映していくことができるのです。
使用するオークは樹齢100年以上で、セラーマスター、連携する熟練の樽職人がそれぞれ選別します。木材は、樽に成形する前に野外で2~3年寝かせ、強すぎるタンニンを自然の中で和らげます。
メルパンにあるレミーマルタンのセラーは、コニャック・フィーヌ・シャンパーニュの樽を14万個収容しており、その数は世界最大です。コニャックを造るオー・ド・ヴィーは、すべて何年にもわたって熟成し、周囲の環境に溶け込みます。それぞれのセラーは室温と湿度が微妙に異なり、熟成環境を微調整しています。樽の種類も影響するため、状況に応じて、熟成の中で段階的に古い樽へと移されることがあります。
熟成中、オー・ド・ヴィーが蒸発して減っていきます。これを「エンジェル・シェア(天使の分け前)」と呼んでいます。年間2%ほどですが、量にすると毎日、ボトル8000本に相当する量が蒸発しています。
「レミーマルタンのセラーマスターは、日々メゾンの伝統を守りながら、未来を創り続けています」
セラーマスター
セラーマスターの職位は、自らもワイングローワーであった創業者レミー・マルタンが確立したものです。セラーマスターになるには、いくつもの特別なスキルが要求され、メゾンの伝統を継承する責務を負います。
「相応しい人材であるという確信があって初めて、秘密を伝えることができます」
セラーマスターには、いくつもの特別なスキルが同時に求められます。葡萄栽培の専門知識を習得していること、経験豊富なワイン醸造家であること、ブレンドに精通していること、テイスティングのために鋭敏な嗅覚を持っていること、そして少々の芸術的感性とマジシャンのような魅力を持ち合わせていること。セラーマスターは、メゾンの伝統を守るだけでなく、毎日、未来を創り続けています。葡萄や蒸留についてワイングローワーに助言し、オー・ド・ヴィーを確かめて最高のものを選び出し、熟成を見守ります。
現在のレミーマルタンの全てのブレンドを再現できるのは、ただ一人、セラーマスターだけです。葡萄の収穫期や熟成に差があっても、コニャック通であっても1987年と2017年のボトルの差が分からないほどの精度に揃えます。
2014年、バティスト・ロワゾーは34歳という史上稀な若さでセラーマスターに任命されました。同じく、前任は大手コニャックメゾンで史上初めて女性セラーマスターとなったピエレット・トリシェ。彼女の後継を務めています。つまり、セラーマスターの主な責務はメゾンの伝統を守ることですが、レミーマルタンは、この使命を託す人物の選定には保守的ではなく、その才能を高く評価して選び出すのです。
セラーマスターは、次世代のために秘伝のブレンドを守る前任者より直接指南を受けます。
バティスト・ロワゾーは、コニャック地方で生まれ育ち、前セラーマスターであるピエレット・トリシェのもとでレミーマルタンのテイスティングに参加するまでは、エンジニアリングの研究開発に携わっていました。4年間にわたって彼女と共にオー・ド・ヴィーのテイスティング、選別、ブレンドを行った後、2011年に後継者候補に任命されました。
その時点で初めて彼女はセラーマスターのみに伝えられるノウハウを伝え始め、さらに3年かけて全てのブレンドを継承したのです。「相応しい人材であるという確信があって初めて秘密が明け渡される」とロワゾーは説明します。
バティスト・ロワゾーを筆頭にして、レミーマルタンの伝統を未来に伝えながら、メゾンの新たな章が幕を開けたのです。